●『ニッポンジン、総お殿様状態』その1 ステナイデ7号掲載

まいう〜。とにかく、ニッポンがうまい!

野蛮な国アメリカから無事生還できた私は、一人ぽやぽやとグルメな毎日を満喫しております。

そんでもっていじわるな私は、ニューヨークで、格闘の日々を過ごしている友人に、「いや〜、近所の魚屋で買ってきた刺身の新鮮だったことー」とか「スーパーで見つけたケーキがまたとろけるようなおいしさでえー」と残酷な電話をしてしまうのです。

すると受話器の向こうで、生つばを飲み込んでいる音が。

「やだー、つくしちゃん。言わないでよー。帰りたくなっちゃうじゃないのよー。」と、お決まりの言葉。

そこで「はよ帰っておいで。」とにんまりする私。

こうして浦島花子は、あふれるグルメの海を、亀さんの背中にのってあっちふらふら、こっちふらふら・・・。

しかーし!

等の日本人たちは、そんな状況下にあっても、まだものたりないらしい。もっとうまいもの、もっとすごいものを!とうまいものを求めて日本国中、そして世界中に買い出しに行く。かくして日本人、総グルメ状態。デパ地下は高級食材にあふれ、街にはパパパ、パティシエ?だとかいうものが増殖し、スイーツなる聞き慣れないものが氾濫する。

こんなことがかつて日本という国の歴史上にあったか!?

江戸時代のお殿さんでも、『カステイラ』なんて年に数回ぐらいしかお目にかかれなかっただろうに、このご時世カステイラなんぞに誰も見向きもしない。そしてかつては『ワイン』などというしろものは、話しのネタぐらいにしかのぼらなかったであろうものが、今じゃあろうことか、そこらのねえちゃんたちもボージョレーだの、ブルゴーニュだのと、うんちくをたれたりする。 お殿様よりすごいうまいものを、私たち日本人のほとんどが、毎日食っているのだ。

これってすごいことじゃないの!?

私がニューヨークにいたときは、おいしいケーキなんてめったにお目にかかれなかった。ケーキ屋さんには、合成着色料たっぷりの、日越しでかちかちになった下品な味の、甘すぎて食えないスイーツ(これぞ、ほんとの)が並ぶ。勇気をふりしぼって注文すると、ケーキはまとめて、アルミホイルでくるんでくれる(!)。もちろん箱なし。うちに持って帰ると、デコレーションケーキは、どこにもデコレーションの面影なし。どっちがチョコレートケーキで、どっちがショートケーキだかわからなくなったかたまりを、ダンナと二人、フォークでつっつくむなしさ....。エーイ、腹に入ったらみんな同じじゃ、と自分に言い聞かせる。

最近のコマーシャルで「日本人は、うるさい」というのがある。ほんとに、うるさい。なんでも、うるさい。アメリカ人も、うるさい。でもそれは騒がしいの意。日本人のそれは、きむずかしい、になる。

うるさすぎて、極めすぎて、知らない間に世界一になっちゃった。不幸なことに、それに日本国民まだ気がついていない。口では経済大国っていいながら、心の中では今だに貧しい国だと思っている。テレビは毎日のように、「日本は遅れている、日本は遅れている」と念仏のようにとなえる。

ほんとにそうなの!?

毎日あふれるような世界中のモノが集まって、ありとあらゆる高級品に触れられて、それでもなおかつ貧しい国とお思いになるなら、きっとそれは心のほうが貧しいのでしょう。

ああ、お江戸のお殿様がこれを見たら、さぞかし嘆かれることでしょうねえ〜。

●『ニッポン癒し天国』

●『ニッポン不安天国』

●『ニッポン祭り天国』

●『NYから帰ってきちゃった』その1

●『NYから帰ってきちゃった』その2

●『NYから帰ってきちゃった』その3

●『ニッポンジン、総お殿様状態』その1

●『ニッポンジン、総お殿様状態』その2

●『ニューヨークの陶芸教室』

●『ニューヨークのスカンク』

●『ニューヨークのゴボウ』

●『オハイオの田舎娘』

●『ほめちぎるアメリカ』

●『アメリカ人は猫舌?』

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